人と人、人と社会のつながりから、
発達の仕組みを捉え直す理論モデル
DEARS理論(Developmental Expansion of Affective Relational Spheres)は、人間には重要な他者との情緒的なつながりを形成しようとする基礎的な志向性があり、その対象領域が発達とともに広がっていくという視点から、人間の心理社会的発達を捉える理論モデルです。

理論の中核命題
人は重要な他者との間に情緒的なつながりを築こうとする根源的欲求を持っている。
つながりを求める対象領域は、発達とともに重なりながら広がり、各領域の重要性も再編される。
新たな対象領域とのつながりを求めることで、新しい発達課題が生まれ、それに向かう行動や経験が自己の形成を促す。
つながりの充足・未充足は、自信、意味、所属感、アイデンティティ、比較や競争などに影響すると考える。
情緒的対象領域の発達的拡張
つながりを求め始める開始時期は、対象領域の種類によって異なります。
親・養育者
0歳
情緒的つながりの中心は親・養育者。安心の土台を形成し、他者とのつながりの感覚が芽生える。
友人・仲間
3歳頃
同年代の友人・仲間とのつながりが重要になる。家庭と友人関係の双方の中に自己を位置づける。
恋愛対象
思春期以降
恋愛対象とのつながりが加わる。友人関係とは異なる、特別な親密性の対象が重要になる。
社会
思春期以降
学校・職場・地域など、集団としての他者とのつながりの中にも、自己を位置づけるようになる。
DEARS理論では、第一次・第二次反抗期を、情緒的対象領域の拡張・再編に伴って生じる副次的な現象として捉えています。そのため、二つの反抗期が見られる発達時期を、新たな対象領域への志向が広がり始める時期の目安としています。なお、これらは理論上の想定であり、実際の発達時期には個人差があります。
DEARSとい名称について
DEARSは、「情緒的対象領域の発達的拡張」という理論の中心概念に由来する名称です。英語名「Developmental Expansion of Affective Relational Spheres」の主要な5単語の頭文字を組み合わせて名づけています。
また、「DEARS」は、英語で「親愛なる人」「大切な人」を意味する「dear」の複数形「dears」と同じ綴りです。そこには、親・友人・恋愛対象・社会へと、つながりを求める対象領域が広がっていく理論の特徴を、「大切な人たち」という言葉に重ねる意図も込めています。
DEARS理論が説明しようとするもの
DEARS理論は、発達・つながり・社会的行動に関わるさまざまな心理現象を統合的に説明することを目指しています。
重要な他者との情緒的なつながりが、自分の存在への安心感を支えるという観点から、自己肯定感の形成を捉えます。
自律と反抗期つながりを求める対象の拡張に伴い、親子関係の重要性や役割が再編されることで、自律や反抗が生じる可能性を考えます。
アイデンティティ重要な他者や社会とのつながりの中で、「自分はどのような存在か」というアイデンティティが形成される過程を考えます。
比較と競争重要な他者から肯定的な関心を得ようとする心理に着目し、比較や競争が生じる仕組みを捉え直します。
情緒的なつながりは、身近な他者だけでなく、社会との間にも形成されると考え、その心理的な形成過程や影響を検証していきます。この視点から、人口の地域流出・定着の問題を捉え直し、改善につながる方策を探ります。
競争代替経路との関係

競争代替経路モデルは、DEARS理論を基盤に、人がなぜ競争するのか、その背後にある心理的な充足の仕組みを捉え直すモデルです。
競争を通じて求めていた心理的な充足を、他者との比較や相対的な優位に依存しない関係形成からも得られるのかを探り、社会実装を通じてその可能性を検証していきます。
研究の現状

現在、DEARS理論の学術的な理論論文化と、仮説の実証に向けた検討を進めています。
本理論は現時点では仮説モデルであり、今後の研究によって理論の妥当性や適用範囲を検証し、必要に応じて修正・発展させていく予定です。
研究へのご関心・お問い合わせ
DEARS理論に関する共同研究、企業研修、出版・取材等についてのご相談を受け付けています。